お肌と皮膚常在菌の相互作用についてはこれまで明確になっていませんが、桃谷順天館と一丸ファルコスの共同研究で皮膚常在菌が季節や年齢によって変化するという研究結果が発表されました。
今回はその研究概要をご紹介するとともに、美肌になるために必要な皮膚常在菌とその増やし方などもご紹介します。
CONTENTS
1.季節と年齢で変わる皮膚常在菌のバランス
「発見!季節や年齢肌で皮膚常在菌に違い。お肌でどんな変化が起こってる?」をお届けします。
前回の編集部ニュースでは「敏感肌では皮膚常在菌の1つ表皮ブドウ球菌が少ない!改善法は?」をお届けしましたが、今回もよく似たテーマでお届けします。
お肌の表面には、皮膚常在菌が約300種類いるといわれています。これらの菌は、お肌を健康に維持するために潤いを産生したり、肌のバリア機能を高めるためにバランスを保ちながら生存しています。
実はこの皮膚常在菌が季節や年齢によって変化するということを、桃谷順天館と一丸ファルコスの共同研究からからわかりましたので、ご紹介します。
1)皮膚細菌叢と皮膚パラメータに関する共同研究概要
これまで、お肌と皮膚常在菌の相互作用については明確になっていません。桃谷順天館と一丸ファルコスは、四季にあわせて年4回、皮膚パラメータ(水分量、皮脂量、弾力など)を測定し、季節や年齢による変化と皮膚パラメータの関連を検討しました。
被験者はそれぞれ、冬(82名)、春(74名)、夏(79名)、秋(74名)で、冬と夏の測定時には皮膚常在菌層も採取しています。
その結果、以下のことがわかりました。
- 季節の変化については、お肌の水分量は春夏にかけて高く、秋冬は低くなっていました。また水分蒸散量は夏に低く、秋冬に高かったとのこと。さらに、メラニン量は夏が高く、肌の弾力は年齢とともに低下がみられました。
- 皮膚常在菌叢は、これまで継時的に大きな変化はなく安定しているとされていました。しかしこの研究では、夏の方が多様な種類の細菌が存在しており、必ずしも安定していないことがわかりました。
- 冬の測定時には、皮膚パラメータと年齢との相関が高かったです。実年齢より加齢した肌の特徴を持つ人(Agingグループ)、年齢相当の肌の特徴を持つ人(Normalグループ)、実年齢より若い肌の特徴を持つ人(Youngerグループ)では、年齢平均値は差がありませんでした。
しかし、肌の明るさ、赤み、シミ、ヘモグロビン値、水分蒸散量について、AgingグループとYoungerグループで有意差がみられました。
- AgingグループとYoungerグループの皮膚常在菌叢を見ると、AgingグループではXanthomonas(キサントモナス)属、Acinetobacter(アシネトバクター)属の細菌が存在している比率が有意に多いことがわかりました。
<AgingグループとYoungerグループで存在比率に差があった細菌>
((株)桃谷順天館プレスリリースより)
なお、この研究は「A study of the relationship between face skin parameters and skin microbiome(顔の肌パラメータと皮膚細菌叢の関係性についての研究)」のタイトルで、国際化粧品技術者連盟世界大会(The 31st IFSCC Congress 2020 YOKOHAM)にてポスター発表されました。
2)Xanthomonas(キサントモナス)属、Acinetobacter(アシネトバクター)属ってどんなもの?
Xanthomonas(キサントモナス)属は、グラム陰性の極鞭毛を持つ好気性桿菌です。キサンタンガムなどの製造に使われています。
Acinetobacter(アシネトバクター)属は、グラム陰性桿菌の真正細菌で、土壌や河川水などの自然の環境中に広く分布している環境菌です。健康な人の皮膚に存在していることもありますが、通常は無害です。
2.美肌へ導いてくれる皮膚常在菌は?
皮膚常在菌は善玉菌、日和見菌、悪玉菌の3つのタイプに分かれ、その中の善玉菌である「表皮ブドウ球菌」がお肌の保護に一役買っています。そうです、美肌を維持する「美肌菌」と言われているのが、この表皮ブドウ球菌です。
1)美肌菌のはたらきとは?
①お肌のバリア機能を高めてくれる
表皮ブドウ球菌は、お肌を弱酸性に維持しながら雑菌や黄色ブドウ球菌などの悪玉菌が増殖するのを防ぐ脂肪酸やグリセリンを生成しています。これがお肌のバリア機能を高める役割を担っています。
②お肌のうるおいに大切な天然の保湿成分をつくる
表皮ブドウ球菌が分解した成分と皮脂腺から分泌される皮脂、汗腺から分泌される汗が混ざり合って、お肌表面に潤いをあたえるNMF(天然保湿因子)を作ります。
このNMFが角質層の水分を守っている保湿成分の1つで、お肌の保湿やバリア機能維持しています。
2)敏感肌の人は「美肌菌」の保有率が少ない!
資生堂が発表した研究結果によると、美肌菌が多い人の肌では水分量が多く、赤みが低いということが分かっています。美肌菌が少ないということが、敏感肌の症状である水分量の低下によるバリア機能低下やお肌の赤みの一因となっている可能性が考えられます。
<頬の常在菌における表皮ブドウ吸気の割合と水分量の相関>
((株)資生堂プレスリリースより)
本試験では、乳酸による刺激に感受性の高い肌を敏感肌、乳酸刺激を感じない肌を非敏感肌としています。
参考:資生堂プレスリリース.夏から秋への変わり目は美肌菌バランスの乱れにご用心! 新発見!敏感肌の原因は“美肌菌”不足!? 皮膚科医が教える、「美肌菌を育てる方法」 ~コロナ禍で敏感肌への意識高まる~(2020年8月20日)
<敏感肌の方のエイジングケアにオススメの参考記事>
*ゆらぎ肌は一時的な敏感肌!スキンケアによるバリア機能正常化で改善
*タイトジャンクションを守ろう!バリア機能正常化と敏感肌対策のコツ
*CE(コーニファイドエンベロープ)を守り敏感肌から解放された美肌へ
3.からだの内側から美肌菌を育てるための食べ物
美肌や美肌菌を育てるための食べ物について、ご紹介します。
1)たんぱく質豊富な食材
たんぱく質はアミノ酸でできている血液や筋肉、お肌や髪、ホルモンの主原料となるものです。
牛肉、豚肉、鶏肉などの肉類はたんぱく質をしっかり摂ることができます。
たんぱく質が分解されるとアミノ酸となり、コラーゲンやエラスチン、NMFを作るので、お肌のハリや弾力に欠かせない食材です。
鹿やイノシシなどのジビエも栄養価が高く乾燥も防ぐ食べ物です。解禁となる冬の間の乾燥肌対策として食べたいですね。
魚からは、良質なたんぱく質だけでなく、DHAやEPAといったオメガ3脂肪酸や、強力な抗酸化作用をもつアスタキサンチンやグルタチオンなど、アンチエイジングに効果的な栄養成分も摂ることができます。
赤身のマグロやカツオはたんぱく質が豊富なだけでなく、DHA、EPA、タウリンを多く含みます。またマグロは鉄分やビタミンEがたっぷりとあり、カツオはビタミンB群・Dが豊富で、ビタミンB12 は魚肉の中では一番多く含まれています。
その他に、アスタキサンチンは鮭、エビ、イクラなど赤い魚類に多く含まれており、グルタチオンは真鱈や赤貝に含まれています。
2)抗酸化作用の高い食材
抗酸化作用を持つ食材は、紫外線ダメージによる肌の酸化、つまり光老化やストレスによる肌荒れを防ぐはたらきがあります。
トマトのリコピン、ニンジンなどのβカロテン、ナスのアントシアニンは抗酸化作用が強く、お肌の老化予防が期待できます。
また、ビタミンACEやポリフェノールを豊富に含む野菜や果物も美肌の維持には必要不可欠です。それぞれの栄養素を豊富に含む食べ物は、以下の通りです。
ビタミンA:ニンジン、ほうれん草、かぼちゃ、モロヘイヤなどの緑黄色野菜やピーマン、パプリカ、トマト。肉類ではレバーやうなぎに豊富。
ビタミンC:野菜ではピーマン、パプリカ、トマト、ゴーヤ、ブロッコリー、果物ではアセロラやキウイ。
ビタミンE:アーモンド、たらこ、アボカド、カボチャなどに豊富
<参考記事>
アーモンドを食べる習慣のある人は顔のシワが少ない?研究結果発表!
アーモンドミルクの日は5月30日!人気秘密はスゴイ美肌効果
トコフェロール(ビタミンE)化粧品で美肌になる5つの効果とは?
3)肌水分量をアップする食材
お肌の水分を保持するのをサポートするなら、セラミドやコラーゲンが豊富なものを摂りましょう。
コラーゲンは鶏の皮、手羽先、軟骨、牛スジ、豚バラ肉、豚足、魚の皮、うなぎなどに豊富です。
また、セラミドは生芋こんにゃくや、しらたき、黒ごま、黒豆、ひじき、わかめ、ごぼう、ソバ、コーヒー、紅茶、黒胡椒、牛乳などに豊富です。セラミドを含む食べ物を摂る時は、セラミドを生成するナイアシン(ビタミンB群)を一緒に摂ると効果的です。
ナイアシンは、鶏肉、レバー、かつお、さば、ブリ、まぐろなどの動物性食品のほか、きのこ類や豆類、小麦胚芽などに多く含まれています。
美肌のための食べ物と栄養素については、「美肌をもたらす食べ物と飲み物は?その種類から栄養素まで」で詳しくご紹介していますので、参考にしてください。
<参考記事>
美肌のための食事のとり方とアンチエイジングへの効果は?
セラミドを食べ物、飲み物で!乾燥肌とシワにも効果が期待?
プルプル美肌になる!コラーゲンサプリメントの種類と選び方のコツ
4.美肌菌を増やすためには、便秘対策も大切
せっかく美肌に役立つ食べ物を摂っても、それを消化する「腸内の環境」が良くなければ、栄養素をしっかりと吸収することができません。
だから、お肌と同じく腸内に棲んでいる腸内細菌のバランスを良くキープすることが大切となります。バランスが崩れると、便秘がちになります。
便秘はお肌の大敵ですよね。便がずっと腸の中にとどまっているとだんだん腐敗してきて、腸内細菌に悪玉菌が増えてきて有害物質が発生します。
そうなると、有害物質が腸から吸収され血中に溶け込み、肌荒れだけでなく、大人ニキビなどの肌悩みを引き起こします。
さらに、必要な栄養素がお肌に行きわたらないとターンオーバーが滞り、お肌のくすみや乾燥肌の原因ともなります。
腸内の善玉菌を活発に活動させるためには、善玉菌がたっぷりの食事をしましょう。
大豆や納豆などの豆類、ゴボウ、海藻類といった食物繊維や、乳酸菌やビフィズス菌、発酵食品を積極的に摂りたいですね。
便秘と美肌については、「便秘からくる肌荒れ 解消には食事の見直しから」の記事も参考にしてください。
<参考記事>
女性ホルモンを増やす食べ物でエイジレスな美肌へ!
エクオールとサプリメントのランキングに頼らない選び方
5.編集後記
「発見!季節や年齢肌で皮膚常在菌に違い。お肌でどんな変化が起こってる?」をお届けしました。
皮膚常在菌は個人それぞれで違いがありますが、同じ人でも季節や年齢で棲んでいる皮膚常在菌が変化しているんですね。今回ご紹介した桃谷順手館と一丸ファルコスの研究結果から、季節によってお肌が乾燥したり、季節の変わり目には敏感になったりすることがデータとしてみることができ、とても興味深いです。
日頃から皮膚常在菌の数を一定に保ち育てるために、食事の取り入れかたに気を配っていきたいと思います。
この「発見!季節や年齢肌で皮膚常在菌に違い。お肌でどんな変化が起こってる?」の記事が、ナールスエイジングケアアカデミーの読者のみなさまのお役に立てれば幸いです。
著者・編集者・校正者情報
医学出版社、医学系広告代理店にて編集・ライターとして、医師向け、患者向けの情報提供資材や書籍等の記事の編集・執筆や、国内・海外医学会取材・記事執筆を行う。
(編集・校正:株式会社ディープインパクト 代表取締役 富本充昭)
京都大学農学部を卒業後、製薬企業に7年間勤務の後、医学出版社、医学系広告代理店勤務の後、現職に至る。
医薬品の開発支援業務、医学系学会の取材や記事執筆、医薬品マーケティング関連のセミナー講師などを行う。
一般社団法人化粧品成分検定協会認定化粧品成分上級スペシャリスト
著作(共著)
当社スタッフの本業は、医学・薬学関連の事業のため、日々、医学論文や医学会の発表などの最新情報に触れています。
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