フィラグリンは表皮の角層の細胞をつくるたんぱく質。
分解されると天然保湿因子(NMF)となって、肌のバリア機能を守ります。
実は、アトピー性皮膚炎の患者さんでは遺伝的にフィラグリンが少ないことが多いのです。
この記事では、フィラグリンとは何か?その役割、増やすはたらきのある化粧品成分をご紹介します。
- フィラグリンは、表皮の顆粒層にあるたんぱく質です。前駆物質であるプロフィラグリンが分解されてできたものです。
- フィラグリンは角質でアミノ酸に分解されます。そして、天然保湿因子(NMF)の主成分として利用されます。
- フィラグリンは、肌のターンオーバーの過程を通してバリア機能を守る大切な成分です。これが少ないとバリア機能が低下し、乾燥肌ほか肌悩みや皮膚の病気の原因となります。
- フィラグリンと関係の深い皮膚の病気は、アトピー性皮膚炎です。日本人のアトピー性皮膚炎患者の約3割にフィラグリン遺伝子異常があります。
- フィラグリンを増やす化粧品成分がいくつか研究で報告されています。インチンコウエキス、マンダリンオレンジ果皮エキス、サガラメエキス、デフェリフェリクリシンなどがあります。
京都大学農学部卒医薬品業界歴30年以上の専門家の執筆記事
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1.フィラグリンが十分な美肌でいたいあなたへ
「フィラグリンは肌のバリア機能に大切!天然保湿因子の源」をお届けします。
あまり知られていない皮膚に関するこの言葉。
実は、フィラグリンは肌のバリア機能にとても深い関係があります。
アトピー性皮膚炎の患者さんのアレルギーや免疫に関連する遺伝子の異常を調べていく過程において、フィラグリン遺伝子の異常が見つかったことで皮膚科医や医学研究機関の間で注目を浴びるようになりました。
フィラグリンとは、表皮にあるたんぱく質です。
ターンオーバーの過程でアミノ酸にまで分解されます。
そして、天然保湿因子(NMF)の主成分になります。
天然保湿因子(NMF)は、保湿の3大因子の1つとして、バリア機能を守るのです。
フィラグリンが少なかったり、上手く分解されないと天然保湿因子(NMF)が減ってしまいます。
だから、乾燥肌の原因になってしまいます。
このように、フィラグリンは健やかな美肌のためにとても大切な成分の1つです。
正しいスキンケアやエイジングケアのためには、皮膚の仕組みや肌にある成分のはたらきを理解することが大切です。
この記事ではフィラグリンとは何か?その役割をご紹介します。
また、フィラグリンを増やす化粧品成分をご紹介します。
「フィラグリンって、一体、何?わかりやすく教えて!」
「フィラグリンと肌悩みの関係は?なぜ、少ないと問題なの?」
「フィラグリンを減らさない方法はあるの?知りたい!」
「アトピー性皮膚炎だとフィラグリンが少ない?治療はどうするの?」
「フィラグリンを増やす化粧品成分って?ぜひ、知りたい!」
など、フィラグリンに興味がある方は、ぜひ、続きをチェックしてみてくださいね。
2.フィラグリンとそのはたらき
1)フィラグリンとは?
フィラグリンとは、角質層にあるたんぱく質です。
まず、ターンオーバーの過程で、表皮の顆粒層の顆粒細胞のなかに存在するガラス質状の顆粒であるケラトヒアリン顆粒の中にプロフィラグリンが生まれます。
プロフィラグリンは、顆粒層から角質層へ移動すると酵素によって分解されフィラグリンになります。
<プロフィラグリンの変化>
2)フィラグリンのはたらき
フィラグリンは、表皮の角質層の骨格となるたんぱく質「ケラチン繊維」を凝集させることで、健やかで丈夫な保湿力のある角質層をつくるはたらきの中心的役割を担っています。
また、その過程で「ブレオマイシン水解酵素(BH)」などの酵素の力を借りてアミノ酸に分解されます。
そして、それが天然保湿因子(NMF)の主成分になります。
天然保湿因子(NMF)は、水分を吸着する保湿成分で、角質や角層細胞の中に10~30%あります。
アミノ酸やPCA-Naといったアミノ酸代謝物が約半分を占め、ほかに乳酸塩、尿素、クエン酸塩などでできています。
このようにフィラグリンは、ケラチン繊維を凝集することと、分解されて天然保湿因子(NMF)の主成分となることで、肌のバリア機能が正常にはたらくことを助けます。
<参考記事>
*モデルが実践している美肌キープのケアはやっぱり「保湿」?!
3)フィラグリンと肌悩みの関係
フィラグリンが少なかったり、異常があるとバリア機能が低下します。
そうなると、皮膚常在菌バランスが崩れ、pHが弱酸性からアルカリ性に傾くことも。
また、バリア機能の低下は、顔のくすみやインナードライ肌など、さまざまな肌悩みの原因になります。
さらに、最近では角質細胞の面積や形状と顔のたるみやシワなど肌老化と関係していることがわかってきました。
フィラグリンが少ないことで、こうしたエイジングサインにも悪影響を与えている可能性もありそうです。
このようにフィラグリンは、コーニファイドエンビロープ(CE)やタイトジャンクションなどと同じくあまり知られていませんが、肌のバリア機能の正常化にとても大切なのです。
<参考記事>
*角層細胞が顔のたるみ、シワの形を決めていることがわかった!
3.フィラグリンとアトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、もともと何らかのアレルゲンによる感作があって、皮膚にアレルギーが起こり、皮膚炎を発症するものと考えられていました。
アレルギーは免疫と深いかかわりがあるため、治療のアプローチは免疫に対する対策が主流でした。
また、かつてはそのほかの要因が複雑に絡み合っていることはわかっていましたが、アレルギー以外の大きなインパクトを与える要因が何かを解明するには至っていませんでした。
一方、アトピー性皮膚炎と皮膚がカサカサの鱗状になる尋常性魚鱗癬がしばしば合併することはよく知られていました。
尋常性魚鱗癬は、フィラグリン遺伝子異常による角化異常が原因であることから、アトピー性皮膚炎にもフィラグリン遺伝子異常が関与している可能性があると考えられていました。
そうしたことを背景に、欧米や日本でアトピー性皮膚炎患者さんにフィラグリン遺伝子の異常があるかどうかの調査研究が進みました。
その結果、欧米では40%〜半数、日本人では約20〜30%の方に、フィラグリン遺伝子の異常があることがわかったのです。
また、ほぼすべての方でフィラグリン蛋白が低下していることがわかりました。
つまり、予想通り、フィラグリンの遺伝子異常がアトピー性皮膚炎に関与していることがわかったのです。
こうしたことに加えて、さまざまな研究が進んだ結果、アトピー性皮膚炎の成り立ちや治療の考え方が変化しました。
アトピー性皮膚炎は、アレルギーの前に皮膚のバリア機能の異常がまずあって,その結果,アレルギー感作が起こりやすくなるのではないか、ということです。
そのため、アトピー性皮膚炎の治療は、バリア機能を守ることが重要視され始めたのです。
具体的には、治療の選択肢として、ワセリンやヘパリン類似物質など医薬品の保湿剤によって、バリア機能の改善を図ることが推奨されるようになりました。
また、アトピー性皮膚炎になりやすい乳児にしっかりと保湿ケアを行うことで、発症率が減少するという研究もあることから、赤ちゃんの頃からスキンケアを行うアプローチの重要性が認識されるようになっています。
こうしたことから、現在では、医学的にもアトピー性皮膚炎の症状改善にスキンケアが重要視されるようになったのです。
ほかにもフィラグリンは、老人性乾皮症や、敏感肌の方などで少ないことがあります。
こうした背景から、フィィラグリンを増やすエイジジングケア化粧品や医薬品の開発が期待されています。
<参照文献>
秋山真志: 各科臨床のトピックス: フィラグリン遺伝子変異とアトピー性皮膚炎.
日本医師会雑誌 2010; 138 (12): 2536-2537(総説).
<参考記事>
4.フィラグリンを増やす化粧品成分
1)インチンコウエキスとカワラヨモギ花エキス
佐藤製薬株式会社の研究で、インチンコウエキスがフィラグリン遺伝子発現促進作用を持つことが発表されています。
インチンコウエキスとは、キク科植物であるカワラヨモギの成熟した頭花を乾燥させて得られる生薬です。
似た化粧品成分として、カワラヨモギ花エキスがあります。
2)サガラメエキスとマンダリンオレンジ果皮エキス
ピジョン株式会社の研究で、サガラメエキスおよびマンダリンオレンジ果皮エキスの混合物を配合したスキンケア製品において、フィラグリン遺伝子の発現促進効果が認められました。
マンダリンオレンジ果皮エキスは、フィラグリン分解酵素の産生促進作用によって、天然保湿因子(NMF)を増やす作用があることが知られています。
3)デフェリフェリクリシン
月桂冠総合研究所は、日本酒、酒粕などに含まれるペプチドであるデフェリフェリクリシンが、フィラグリンを増やすことを発見しました。
これら以外でも、脂溶性ビタミンB6の誘導体トリスヘキシルデカン酸ピリドキシンにもフィラグリンを増やすはたらきがあります。
<本記事全般の参考書籍>
*あたらしい皮膚科学第3版(清水宏 著、中山書店、2018年2月)」
*「皮膚科医のための香粧品入門」(〔皮膚科の臨床 2014年10月臨時増刊号[56巻11号] 〕金原出版株式会社)
5.まとめ
フィラグリンとは何か、またそのはたらきをご紹介しました。
いかがだったでしょうか?
フィラグリンは、ターンオーバーの過程でできるたんぱく質です。
最終的にアミノ酸に分解されて天然保湿因子(NMF)の主成分となります。
つまり、バリア機能を守るためにとても大切な成分です。
また、アトピー性皮膚炎と深い関係があることがわかってきました。
ぜひ、フィラグリンについて理解を深め、健やかな美肌のために活かしてくださいね。
この記事「フィラグリンは肌のバリア機能に大切!天然保湿因子の源」が、エイジングケア世代の女性のお役に立てば幸いです。
著者・編集者・校正者情報
(執筆:株式会社ディープインパクト 代表取締役 富本充昭)
京都大学農学部を卒業後、製薬企業に7年間勤務の後、医学出版社、医学系広告代理店勤務の後、現職に至る。
医薬品の開発支援業務、医学系学会の取材や記事執筆、医薬品マーケティング関連のセミナー講師などを行う。
一般社団法人化粧品成分検定協会認定化粧品成分上級スペシャリスト
著作(共著)
(編集・校正:エイジングケアアカデミー編集部 若森収子)
大学卒業後、アパレルの販促を経験した後、マーケティングデベロッパーに入社。
ナールスブランドのエイジングケア化粧品には、開発段階から携わり、最も古い愛用者の一人。
当社スタッフの本業は、医学・薬学関連の事業のため、日々、医学論文や医学会の発表などの最新情報に触れています。
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