NHKの人気番組だった「ためしてガッテン」では、2012年に大人ニキビやニキビ治療薬「アダパレン」についても取り上げられました。
その後、治療は進化しています。今回の記事では、2012年に放送された「ためしてガッテン」の内容の紹介とニキビ治療薬のその後の進化をご紹介します。
ナールスコム店長 村上清美
メーカー営業、エステティシャンを経て、現在、ナールスゲン入りエイジングケア化粧品「ナールス」の公式サイト「ナールスコム」の店長として、ナールスブランドに関わる業務全般を担当。
<保有資格>
コスメコンシェルジュ
◆日本化粧品検定1級
◆日本エステティック協会認定エステティシャン
◆日本エステティック業協会上級認定エステティシャン
◆ソワンエステティック協会認定ビューティーセラピスト
*大人ニキビの原因と対策の全てがわかる!|エイジングケア化粧品のナールス
CONTENTS
1.「ためしてガッテン」で取り上げられたのは大人ニキビと画期的治療薬
2012年に放送された「ためしてガッテン【毛穴の目立つ人必見!キレイに消す最終ワザ】」では、毛穴の詰まりや開きとの話の後、ニキビについても話題を提供されています。
というのは、ニキビは毛穴の詰まりが始まりなので、両者には深い関係があるからです。
また、ニキビの中でも大人ニキビに着目されていました。
大人ニキビも思春期のニキビと同じく吹き出物がでますが、原因が少し異なります。
原因の違いについて詳しくは後ほど紹介しますが、番組ではニキビ治療薬と大人ニキビに使うことへのリスクについても話がありました。
「ためしてガッテン」では、薬剤名は明らかにされませんでしたが、その薬剤は「アダパレン」(商品名:ディフェリンゲル)です。
2012年当時、保険診療で使えるニキビの画期的な治療薬といえば、アダパレンしかありませんでしたから、「ためしてガッテン」の中で明かされなくても、医師や医療従事者、医薬品に詳しい方なら、すぐに名前がわかります。
番組から10年以上経過した現在では、アダパレン以外にもニキビ治療に保険診療で使える薬剤が増えています。
この記事では、「ためしてガッテン」の番組で紹介された大人ニキビと思春期のニキビの違い、また、アダパレンがなぜ大人ニキビには要注意なのかを検証します。
さらに、アダパレンが使われていた2012年以降に、登場したニキビ治療薬の進化ついても触れてみます。
<参考記事>
初期のニキビの治し方!毛穴の詰まりを解消する効果的なスキンケア
<ためしてガッテン関連記事>
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2.「ためしてガッテン」で取り上げられた大人ニキビとは?
ニキビといえば、皮脂が過剰で肌がオイリーな人の皮膚の病気と思われています。
思春期のニキビの場合、ほぼそのとおりなのですが、大人ニキビの場合は必ずしもそうではありません。
では、思春期のニキビと大人ニキビはどう違うのでしょうか?
次の表にまとめているとおりです。
思春期のニキビ | 大人ニキビ | |
年代 | 思春期(10代) | 20歳以降 |
できやすい部位 | 皮脂分泌の多いTゾーン (額、小鼻) | 乾燥しやすいUゾーン (頬、口周り、あご) |
原因 | 思春期に性ホルモンや成長ホルモンの分泌が活発になり、皮脂腺を刺激することで、皮脂の過剰分泌が起こり、毛穴に詰まる | ホルモンバランスの乱れや睡眠不足、食生活の乱れなどによるバリア機能の低下、ターンオーバーの乱れによって皮脂の過剰分泌が起こり、毛穴に詰まる |
肌質 | 脂性肌に多い | 乾燥肌やインナードライ肌、敏感肌 |
このように最終的には、ニキビなので「皮脂が毛穴に詰まる」ことで発症しますが、そこへ行きつくプロセスが違うことがわかります。
皮脂は脂性肌でも分泌が多くなりますが、乾燥肌などでバリア機能が低下しても肌を守るために分泌が増えます。
大人ニキビの多くは、このパターンなのです。
そのため、ニキビのスキンケアも治療も、こうした原因の違いを考慮することが大切です。
<参考記事>
皮脂を抑えるエイジングケアで美肌になる!不足もやりすぎもNG
3.アダパレンは大人ニキビに危険?
「ためしてガッテン」では、思春期のニキビと違って大人ニキビは乾燥肌の場合が多いのでアダパレンを使うと副作用が出て、かえって悪くなることがあるという紹介がありました。
この点についてはどうでしょうか?
まず、アダパレンがどんなニキビ治療薬なのかを紹介した上で、乾燥肌に使うのは副作用のリスクがあるのかを考えてみます。
「ためしてガッテン」では、ここまで詳しい解説はありませんでしたが、アダパレンについて深く知ることができるので、ぜひ、チェックしてみてください。
1)アダパレンとは?その作用メカニズムは?
アダパレンとは、ビタミンA誘導体であるトレチノインと似た構造を持つ「ナフトエ酸誘導体」という化合物です。
トレチノインは、肥厚した角質を剥離してターンオーバーを促進し、毛穴の詰まりを解消します。
一方、アダパレンは、表皮内で顆粒細胞から角質細胞になることを抑制して、ニキビを予防します。また、トレチノインと同じく角質剥離(いわゆるピーリング作用)もあると考えられています。
トレチノインとアダパレンを同じ濃度で比較した場合、アダパレンのほうが早く効果が現れます。また、副作用が少ないとされています
なお、レチノールもビタミンA誘導体の1つで、トレチノインの1/100程度の効果です。
<参考記事>
2)ディフェリンゲルとは?
このアダパレンを有効成分として0.1%の濃度で配合した医薬品の商品名が、ディフェリンゲルです。
ディフェリンゲルは、2008年10月に認可されましたが、その当時、日本初の外用レチノイドの保険適用のニキビ治療薬として、皮膚科医の間でも大きな期待を持って迎えられました。
それまで、日本では保険診療で使えるニキビ治療薬は抗菌薬しかなく、ほかでは面ぽう圧出という処置をするなど、選択肢が限られていました。
そのため、ニキビで皮膚科に通っても満足な治療効果が得られないこともありニキビ用化粧品を使ったセルフケアで対処する方も少なからずいました。
ディフェリンゲルは、欧米では日本で承認される10年以上前に認可されていました。また、現在もニキビの第一選択薬として処方されています。
このように、アダパレンを有効成分とするディフェリンゲルは、ニキビ治療の進展に大きく貢献したのです。
3)ディフェリンゲルの副作用は?
ディフェリンゲルの副作用は、全体の80%の患者さんに認められます。
ほかの医薬品と比べると発現率は高いです。
具体的な副作用は、赤み、乾燥、落屑、皮膚刺激(ぴりぴり感、かゆみ)などが挙げられます。
副作用は個人差がありますが、通常、1カ月ほどで落ち着いてくることが多いです。
そのため、皮膚科では患者さんの肌の様子を見ながら、ディフェリンゲルによる治療を継続するか中止するかを決めます。
では、なぜ副作用がでるのでしょうか?
それは、ディフェリンゲルの有効成分であるアダパレンの薬理作用によるものです。
アダパレンは、角質の生成を抑えて、異常角化による毛穴の詰まりを防ぎます。角質の生成を抑制することで、角質層は薄くなります。
その結果、肌のバリア機能が低下して肌が乾燥しやすくなったり、敏感になって刺激によるかゆみなどが出現するのです。
<参考記事>
4)大人ニキビにディフェリンゲルは使える?
ディフェリンゲルの有効成分のアダパレンの薬理作用を考えると、乾燥肌が原因の大人ニキビでは、副作用のリスクが高くなることがわかりますね。
そもそも乾燥肌の場合は、バリア機能が低下していることが多いので、ディフェリンゲルを使うとアダパレンの持つ薬理作用によってさらにバリア機能が低下するリスクがあります。
では、大人ニキビにディフェリンゲルは使えないのでしょうか?
これは患者さん個々の肌状態や医師の判断によって異なります。
副作用のリスクが高く効果よりも安全性を優先した場合は、ディフェリンゲルは使用されないでしょう。
一方、副作用のリスクはあっても、ニキビに対する効果がそれを上回ると判断された場合は、使用されることになります。
「ためしてガッテン」で紹介されたように、大人ニキビに対して安易にディフェリンゲルを使うことはリスクが高くなるのは間違いありません。
しかし、実際に使うかどうかはケースバイケースなのです。
4.大人ニキビ予防に大切なのは日々のスキンケア・エイジングケアや生活習慣
大人ニキビがひどくなった場合は、皮膚科や美容皮膚科での治療が必要になりますが、予防のためには、毎日のスキンケアやエイジングケア、良い生活習慣が大切です。
1)大人ニキビの予防はスキンケアやエイジングケアの基本を徹底
「ためしてガッテン」の毛穴のケアでも紹介のあった、優しい洗顔や適切な保湿が大切です。
大人ニキビの場合は、できるだけ優しい洗顔料を使って、正しい方法で行いましょう。
保湿成分としては、セラミドやアクアインプール、ウィルブライドS-753などがおすすめです。
また、紫外線ダメージは、酸化の原因になったり、バリア機能低下の原因になってしまいます。だから、日焼け止めやUVカットの衣類、日傘などを活用して、季節を問わず紫外線対策を行いましょう。
<参考記事>
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2)大人ニキビを防ぐ生活習慣
「ためしてガッテン」ではあまり触れられませんでした。しかし、スキンケアやエイジングケアに加えて、正しい生活習慣も大切です。
特定の食べ物がニキビに効いたり、悪化させるというエビデンスはありませんが、それでも気を付けたほうが良いことはあります。
ビタミン類やミネラルは積極的に摂りましょう。
一方、脂質や糖質などの摂りすぎは要注意です。
また、質が高い十分な睡眠やストレスの発散なども大切です。
<参考記事>
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5.「ためしてガッテン」当時から進化したニキビ治療
2012年当時は、新しいニキビ治療薬はディフェリンゲルだけでした。
その後、現在に至るまでに新しい治療薬が登場しています。
また、2017年に日本皮膚科学会から「尋常性痤瘡治療ガイドライン2017」が発刊されました。
その中で、ニキビ治療は炎症のある赤ニキビや黄ニキビの治療だけにとどまらず、炎症が治まった後の面皰(めんぽう=コメド)に対する維持療法の必要性も唱えられています。
また、過酸化ベンゾイルの登場によって、薬剤耐性痤瘡桿菌の増加を回避できるようになりました。
ここでは、ディフェリンゲル以降に保険適応が認められた3つの治療薬と難治性ニキビの自由診療の治療薬1つを紹介します。
<参照元>
林伸和ほか,尋常性痤瘡治療ガイドライン2017.日皮会誌 127(6): 1261-1302, 2017
1)ベピオゲル
2014年承認。
過酸化ベンゾイルを医薬有効成分とする白濁したゲル状の医薬品です。
活性酸素を発生させることによって、アクネ菌を殺菌する抗菌作用があります。
長期使用でも、薬剤耐性痤瘡桿菌を増加させません。
また、角質の詰まりを解消させる「角層剥離作用」によって、古い皮脂や角質を毛穴の外で出すことで、毛穴の詰まりを改善します。
白ニキビに効果的で、炎症が起きた赤ニキビの治療にも使われることがあります。
2)エピデュオゲル
2016年承認。
アダパレンと過酸化ベンゾイルの2種の医薬有効成分を配合したゲル状の医薬品です。
高いニキビ改善効果が期待できる一方、副作用も出やすいデメリットがあります.
3)デュアック配合ゲル
2016年承認。
過酸化ベンゾイルと抗菌薬クリンダマイシンの2種の医薬有効成分を配合したゲル状の医薬品です。
保険診療で炎症のあるニキビに使われます。
治療ガイドラインでは炎症期における軽症、中等症、重症どちらでも推奨度Aに位置付けられている医薬品です。
4)イソトレチノイン
2023年現在国内未承認。
イソトレチノインは、ビタミンA誘導体の1種です。
皮脂の分泌を抑える作用、アクネ菌に対する抗菌作用、抗炎症作用に優れているため、重症の炎症性ニキビに対して効果を発揮します。
ニキビ治療の先進国であるアメリカやカナダなどでは、治療に必要不可欠な基本薬として認知されています。
しかし、日本では保険診療で使えないため、自由診療となります。
<参考記事>
6.まとめ
NHKの人気番組だった「ためしてガッテン」の大人ニキビやニキビ治療薬「アダパレン」についての内容をご紹介しました。
アダパレンは、大人ニキビに使うと副作用のリスクが増えますが、医師の判断で必要な場合は使うことは可能です。
また、番組では紹介しきれていなかったアダパレンの詳しい解説も行いました。
さらに、その後のニキビ治療の進化にも触れました。
ニキビは毛穴の詰まりから始まり、炎症を起こすと皮膚科などで治療を受けることが必要になります。
できれば、予防をはじめ、炎症を起こす前段階で適切な対策を行うことで進展を止めましょう。
著者・編集者・校正者情報
医学出版社、医学系広告代理店にて編集・ライターとして、医師向け、患者向けの情報提供資材や書籍等の記事の編集・執筆や、国内・海外医学会取材・記事執筆を行う。
(編集・校正:株式会社ディープインパクト 代表取締役 富本充昭)
京都大学農学部を卒業後、製薬企業に7年間勤務の後、医学出版社、医学系広告代理店勤務の後、現職に至る。
医薬品の開発支援業務、医学系学会の取材や記事執筆、医薬品マーケティング関連のセミナー講師などを行う。
一般社団法人化粧品成分検定協会認定化粧品成分上級スペシャリスト
著作(共著)
当社スタッフの本業は、医学・薬学関連の事業のため、日々、医学論文や医学会の発表などの最新情報に触れています。
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